労働相談室Q&A ~賃金~

『研修・教育訓練』等が労働時間になりますか

●原則:研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。

●労働時間に該当しない事例:①終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。②労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。③会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。

●労働時間に該当する事例:①使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。②自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。(出所:厚生労働省)

先日、上司の命令ではなく、残業しました

従業員が、上司の指揮命令ではなく残業をした場合、労働時間となりません。但し、使用者が黙認している場合など、使用者の指揮命令のもとに行われていると認められる場合には、労働時間として扱う必要があります。

今まで4時間勤務でしたが、6時間勤務に変更になりました。年休を取った場合、年休日の賃金はどちらになりますか

年休日の賃金は、年休を取った日における契約内容によって支払うべきものです。この場合は、年休取得時、つまり、6時間分の賃金を支払わなければなりません。

会社では、労働時間は30分単位となっています

よくある誤りです。法律上、「働いた時間」、いわいる「労働時間」は、1分単位で把握しなければなりません。但し、時間外労働の場合は、事務手続きの簡便化上、「1か月の合計」に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは労働基準法違反として取り扱わないこととなっております。行政通達(昭和63.3.4基発第150号)には、「1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」については、労働基準法違反として取り扱わないとあります。

どんなに残業をしても、手当以外は何ももらえない(定額残業代・みなし残業代)

従業員の方から「どんなに残業をしても、残業代が増えない」という相談を受けます。多くの企業に導入されている、「定額残業代(みなし残業代)」のことです。これは、実際に残業した時間を計算して残業代を支払うのではなく、毎月一定の手当額(例えば営業手当など)を残業代として支給する方法です。このような「定額残業代(みなし残業代)」は、法律違反ではありません。定額残業代(みなし残業代)については、裁判所や労働基準監督署は、厳しい判断をしておりますが、労働契約や就業規則等に明記すれば、採用することができます。 もちろん、法律上支払うべき残業代がその手当の額を上回るときは、その差額を支給しなければなりません。

●悪い例:「基本給に残業代を含む」、「基本給に月25時間分の残業代を含む」

●良い例:「基本給25万円+月25時間分の残業代5万円=合計30万円」、「月給30万円(うち月25時間分の残業代5万円を含む)」

「定額残業代・みなし残業代」とは何ですか

「定額残業代(みなし残業代)」は、多くの企業に導入されております。これは、実際に残業した時間を計算して残業代を支払うのではなく、毎月一定の手当額(例えば営業手当など)を残業代として支給する方法ですこのような「定額残業代(みなし残業代)」は、法律違反ではありません。定額残業代(みなし残業代)については、裁判所や労働基準監督署は、厳しい判断をしておりますが、労働契約や就業規則等に明記すれば、採用することができます。もちろん、法律上支払うべき残業代がその手当の額を上回るときは、その差額を支給しなければなりません。

会社が倒産し、給与が払われません

会社が倒産し、給与が支払われなかった場合、従業員はとても困ります。そこで、国の制度として、「未払賃金の立替払制度」があります。この制度は、企業が「倒産」したために、賃金が支払われないまま退職した従業員に対して、その未払賃金について、国(労働者健康安全機構)が事業主に代わって支払う制度です。「立替払を受けることができる人」は、次に掲げる要件に該当する人です。

(1)労災保険の適用事業場で1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業に「従業員」として雇用されてきて、企業の倒産に伴い退職し、「未払賃金」が残っている人であること。

 ・立替払される金額は、未払賃金総額の8割の額です。・退職日の年齢による限度額があります。・定期賃金、退職手当が対象です。

(2)退職後6か月以内に裁判所への破産手続き開始等の申立て、又は労働基準監督署長への認定申請がされなかった場合は、立替払の対象とはなりません。

■従業員が遅刻した日に残業をした場合、割増賃金を支払わなければなりませんか  

標準的な会社、「午前9時始業、午後6時終業、休憩1時間で所定労働時間8時間」で考えてみましょう。

例えば、この会社で1時間遅刻して午前10時に出社し、午後7時まで勤務した社員がいた場合、どのような扱いをすればよいでしょうか
労働基準法では、「1日8時間、1週間で40時間を超えて労働させた場合は、法定の割増賃金を支給しなければならない」と定めています。
そのため、先ほどの1時間遅刻して同じ1時間の残業をしたようなケースは、1日8時間を超えていないので割増賃金は支払わなくてよいということになります。同じ考え方で、遅刻2時間、残業1時間であれば、1日の所定労働時間に1時間足りません。この場合は、1時間分の賃金控除だけを行います。
逆に1時間遅刻して10時に出勤し、午後8時までの2時間残業した場合は、どうでしょうか。この場合は、午後7時以降は1日8時間を超えますので、単純に1時間の時間外勤務として、1時間分の割増賃金を支給することになります。

2社かけもちで働きます。割増賃金はどちらの会社が支払うのですか

労働時間の通算は、「自社A社の労働時間」と、労働者からの申告等により把握した「他社B社の労働時間」を通算することによって行います。この「他社B社の労働時間」とは、あくまでも労働者からの申告等により把握した時間です。労働時間の通算は、次の2つのケースが考えられます。❶副業・兼業の「開始前」に、「自社A社の所定労働時間」と「他社B社の所定労働時間」を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は「時間的に後から労働契約した会社」の時間外労働となります。❷副業・兼業の「開始後」に、「自社A社の所定外労働時間」と「他社B社の所定外労働時間」を所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となります。上記の労働時間の通算によって、時間外労働となる部分のうち、自社A社で労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。

従業員の給与を減額したい

従業員と会社は雇用契約を結び、その雇用契約に基づいて働いております。給与額についても、雇用契約で定められた条件の1つです。雇用契約は、会社と従業員の双方の合意による法的な約束事なので、たとえ経営が厳しくなっても、会社の判断で、一方的に従業員の給与を減額することはできないというのが大原則です。その大原則のもと、次の通り例外的に従業員の給与の減額が許される場合もあります。

(1)合意による労働条件の変更:会社と従業員の間で合意が成立した場合です。雇用契約は、会社と従業員の間の約束事ですから、お互いに納得の上、契約内容を変更すれば、それが新たな雇用契約の内容になります。すなわち、給与を減額した雇用契約書がお互いの間で再締結されれば、給与の減額は可能ということです。

(2)就業規則による労働条件の変更:従業員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、会社が従業員に説明を尽くした等々により、就業規則の変更に合理性がある場合は、就業規則の変更によって間接的に給与を引き下げることが、従業員本人の同意無しに可能になります。従業員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、会社が従業員に説明を尽くした等々により、就業規則の変更に合理性がある場合は、就業規則の変更によって間接的に給与を引き下げることが、従業員本人の同意無しに可能になります。

「祝祭日」に働いても、休日手当が出ない

本件は、従業員(管理監督者でない)の方が、国民の祝日に関する法律、いわいる「祝祭日」に働いても、会社から休日手当をもらえなかった。というご相談です。まず、労働基準法では、法定休日を定めています。その法定休日に働いた場合には、法律上、従業員には休日手当(いわいる、35%の割増)をもらう権利が発生します。この場合「祝祭日」が、会社の法定休日か否かが問題となります。「祝祭日」を法定休日とするかどうかは、会社の就業規則に明記されております。通常は、「祝祭日」は法定休日にはなりません。従って、通常「祝祭日」に労働しても、休日手当(35%の割増)をもらう権利が発生しません。なお、従業員が「祝祭日」に出勤し、その週の1週間の労働時間が40時間(44時間の会社もある)を超えていれば、休日労働ではなく、時間外労働になります。

昨日、タイムレコーダーの打刻忘れで、 欠勤となった

会社に、タイムレコーダー打刻のルールがあれば、それに従わなければなりません。従業員は、毎日、始業時と終業時に、タイムレコーダーを打刻しなければなりません。今回、従業員は、タイムコーダーを打ち忘れたとはいえ、出勤し、労働している事実が確認できれば、その日は通常の労働日とまったく同様に労働したものとなります。従って、欠勤として処理をした会社の対応は不適切です。但し、残業、いわいる時間外労働については、タイムレコーダーの打刻漏れにより、時間外労働が把握できないのであれば認められない可能性があります。なお、従業員が、再三にわたり、タイムレコーダー打刻という義務を怠り、その結果、労務管理に支障を与えたということになった場合には、懲戒処分の対象となるので、従業員は注意が必要です。

休日にした業務連絡の手当を請求したい

私は、人材派遣会社の営業職です。仕事柄、休日に、派遣スタッフにメールを送信したり、派遣先と業務に関する連絡を取り合っております。今般、私は退職を検討しておりますが、在職中に行った、このような休日労働(派遣スタッフ・派遣先への業務連絡の時間)について、休日出勤手当(給与)を請求できるのでしょうか。上司がこのような事実を黙認し、このような業務従事が常態化していたならば、休日労働として、業務連絡の時間分の休日出勤手当を請求できます。ただし、営業職の従業員には、通常、「営業手当」等が支給されております。その「営業手当」等が、休日の業務連絡分であると、会社からは主張される可能性があります。

週休2日制で、土曜日出勤は「休日労働」か

土曜日の出勤が、「法定休日」の労働に該当するのかどうかという設問です。「法定休日」とは、「1週1日」もしくは「4週4日」の休日のことです。「法定休日」が特定されている場合と、特定されていない場合とでは取り扱いが異なります。まず、「法定休日」が特定されている場合は、割増賃金計算の際に、当該特定された休日を「法定休日」として取り扱います。一方、「法定休日」が特定されていない場合には、土曜日か日曜日のどちらかが「法定休日」となります。土曜日と日曜日の両方に労働した場合は、その暦週において後順に位置する土曜日が法定休日となります。従って、必ずしも「土曜日出勤」がすべて「法定休日」の労働とはなりません。

■「振込手数料」が給与から引かれました

給与の「振込手数料」の負担について、労働基準法には規定がありません。民法第485条(弁済費用の債務者負担の原則)から、一般的には事業主が負担すべきものと考えられます。しかし、民法第485条は「任意規定」であり、労使の特約で振込手数料を従業員負担として、賃金控除協定を締結の上、給与から控除することは可能です。(東京労働局)